塩鮭のライティング遡上

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遡上:19:忘れられる幸福

最近記憶力が落ちてきた。

これが老化かと思うものの、それ以上にほっとしている自分がいる。

 

忘れられるということは幸福だ。

 

些細なことを逐一覚えていると、それらを頻繁に思い出してストレスが増幅する。

面白いもので、頭から消えないのはたいていネガティブなことだ。 

たとえばあの人に言われた嫌な言葉、この人がやった許せない行為、自分がやらなければいけない仕事の山といったこと。  

 

記憶力がよすぎるというのは、ある種、緊張状態にいる証だと専門家に聞いたことがある。 

周囲の環境が危険だから逐一どんなことも覚えているのだと。

そして、安心している関係ではいとも簡単に忘れるということも教えてくれた。

実際、私は彼から教えてもらったこと、言ってもらったことをよく忘れる。

きれいさっぱり忘れて、前にも言ったよ?と言われるまで思い出さない。

それで自分は記憶力がいいと言っていたのだから、今考えるととても滑稽だ。

 

忘れられるというのは、忘れてもまた訊ける、聞いてもOKな関係や環境にいるという安心と安全の証ということだ。


その話を思い出してから、忘れたことに気づくたび、むしろ忘れられる状態の自分すごいと思っている。


老化と焦って気落ちするよりよっぽど健康的でいい。

 

また聞けばいいし、間違いは謝って訂正すればいい。

そう思えるくらいリラックスできているというのは、なんと幸福なのだろうね。