塩鮭のライティング遡上

文章力向上のためにひたすら書くブログです。

41:性差の日本史

今日は性について話をしようと思います。
 
いわずもがな、食欲、睡眠欲と並んで性欲は三大欲求であることは間違いないと思います。
生存欲求を満たす食事を作り、対価をもらう料理人は普通の仕事です。
なのに、なぜ、売春だけが卑しい職業なのか?買う男は卑しくないのか?
 
まったくもって理解できません。
 
話はそれますが、学生時代、歴史の授業が好きでした。
争いが何故起こるのか、それぞれの国のお財布事情などの背景を教えてもらうと、人間の欲望や考えと出来事の整合性がわかってとても面白かったです。
 
翻ると、女であることの不利益も、歴史を知ると、ある程度論理的に解釈できて、いらだちや不愉快に思う感情から距離をとれるのではと思うのです
 
 
という背景をもって、「性差の日本史」を読みました。※展覧会の図録です 
 
いやー! む・な・く・そ!  
男の都合でしかありませんでした。
正確に言えば、金と性欲と政治ですが。
 
かいつまんでざっくり書きます。
 
★9世紀後半~
婚姻制度の成立に伴って、婚姻外の性交渉を売買春と認識し始める。
歌や踊りなど余興のために宴席に侍る職業が遊女で、そこに性行為も付随していた。
遊女を生業とする女系家族があり、世襲で家業を営んでいた。
政治参加もしていて、職業のひとつとして機能していた。 

 

★15世紀後半~ 
経営者として男性が参入するようになり、女系家族自治が消失。
女性が人身売買の対象になる。
遊女屋は当初幕府黙認、のちに公認

 

★公認する理由は金
遊女調達(売買)には莫大に金がかかるため、遊女屋が寺社・豪農等の貸元から借りる。
遊女に高い利息つけて払わせ、遊女屋は差分でもうかる。結果として貸元にもたくさん返ってくる。
プラス遊女屋は奉行所的なところにみかじめを支払うため政府も儲かる

 

なにこの胸糞。
貧しさから売られた女に売春させた金を、男どもが吸い上げるという構造…。
 
そして極めつけがきます。
 
★明治5年の芸娼妓解放令
鎖国を解いた後、欧米列強から、「ダメ人身売買、先進国のするコトじゃないネ」とバッシングを受け、先進国Japanは人身売買などしませんよ!遊女を解放しますと法律改正。 しかし廓で働いてる人の借金はそのまま。
結局は女が自らの意思で売春している、という建前で売買春は続行できるようなザル法
結果として、遊女たちは「自分で選んで売春している淫乱」という烙印で蔑視の対象に。
 

 

いやいやいやいや、なんの解決にもなっとらんやん。むしろ差別を助長しとるやん。
 
そのあとも連綿と、戦中は兵士には 性欲処理が必要不可欠と慰安所をバカスカ作って一億総買春ジャパンですよ。都会でも田舎でも内地でも植民地でも、買春放題。
まじで、みんな、もげて。
 
性差の歴史とはいいますが、これは搾取の連鎖としかいいようのない金の都合。
そこに加えて、妻娘には貞淑を求め女の性欲自体を否定する一方で自分の性欲を満たすことは正当化してきた男の歴史じゃないか。
吐きそうに胸糞です。
 
 
売春が悪でも女が劣等でもなく、すべては政治的背景と、ハゲタカ的に利益追求する男のために貶められたにすぎなかったということです。
 
卑しいのは、性でも女性でもなく、貧しく不遇なものに不利益を押し付けて自己利益をむさぼる搾取の心根である。そう思います。
 
超絶むなくそですが、この図録は男女ともに読んでおくべき一冊。
歴史的資料を数多く載せたこの図録は資料として大変おもしろいうえに、女だからかくあるべし云々とイチャモンつけたり説教垂れてくる輩を論破する理論武装にもなるので大変おすすめです。
 
蔑視や偏見は、連綿と暗黙に作られてきたために、今のわたしたちの中にもあります。
だからこそ、それらの価値観は作為的に作られたものだと知ることは、古い無意味な価値観から距離を置き自分で考え行動を選択するための材料になると思います。
権力者の作った価値観を疑いもせず信じるのはお馬鹿の証左。
 
アイデンティティが女の人、もし不当な扱いを受けても自分が悪いんじゃないんだと自信をもってはねのけてください。
漫然と俺は正しいと疑わないで生きてきた男の人は、これを読んで己の中の差別を悔い改めて常識を新しくしてください
諸々を理解している稀有な男性諸氏は、どうぞ周りの男友達に勧めてください。
 
わたしのかいつまみ方はたいへん恣意的なので、ぜひご自身で読んで確かめてほしいと思います。
 
以上。