塩鮭のライティング遡上

文章力向上のためにひたすら書くブログです。

遡上:2:不倫をやめる方法

今日は小説風にしました。
 
寝転んで片肘をついてだらっとしている。
友人宅のルーフバルコニーで。
風が吹いて適度に涼しいし 、もう檸檬堂を4本は空けている。
 
9月の頭、夜もふけて24時。
夜景が見えるバルコニー、友人たちとのたわいもない話、うまい酒。
なんて良い休日だ。
 
ブッタはこのだらっとしたポーズで悟りを開いたというし、わたしもこのまま悟れる気がしてきた。
気分はもう入滅です。涅槃です。  
 
家主はこの度めでたく彼氏との同棲を決め、今週末に引っ越しを控えている。
この女はとても愉快な人で、飲み屋、職場、ご近所、どこでも気さくに接しているのか友人がめっぽう多い。
そうしてみな引っ越し祝いの名のもと、この部屋のバルコニーに飲み収めにきている。トレンディドラマか。
 
終電とともに人が引けていくのと同じころ、家主は常と変わらず、寝落ちしてしまった。
残るは、男3人、女1人。そして涅槃のわたし。
 
酔った頭で気の利いた話題など 思いつくわけもなく、
めんどくさいなとおもった矢先、女がめんどくさい話を始めた。
 
よくある不倫話で、数年来関係を続けていて、
彼の家の近くに引っ越しまでしたけど相手は離婚する気はなく云々
 
過去に不倫希望男に絡まれたことことがあるので
この件について一家言がある。
ここで出さずにいつ出すのだ。
よし、きた。君の悩みを解決してあげよう。
 
「わたしのこと、愛しているなら、3000万円振り込んで」とお言い。
不倫は裁判になったら確実に未婚側が負けるから、
訴訟費用と、慰謝料と、不倫に費やす年月のお手当までを含めたら
3000万くらい当然である。
 
あなたの預金通帳に¥30,000,000と印字されない限り、
その男はあなたのことを愛してなどいないし、
当然離婚する気もないのであるからして、
それをもって今生の別れとするよろし。
 
懇切丁寧にご説明さしあげたのだが、一同沈黙。
 
論理的破綻のないはずの解決策を無視して、男どもは、
自分を大切にしなきゃと根も葉もない根性論の慰めを繰り広げている。
ヨヨと涙を浮かべ、さらに愚痴を続ける不倫女。
 
なんなのだ。腹しかたたぬ。この仕打ち。
実のない不倫なぞ、好き好んでやっているプレイではないか。
なぜそんなものを慰めるのだ。理解できぬ。
解決策に価値を見出されず、いたく腹立たしいわ。
 
それならこの話を終わらせてやろうではないか。
 
「そんなに好きなら、何年だって、気が済むまでやるしかなくなくない」
 
またも沈黙。
 
そして再度始まる自分を大切にしなきゃ論。
え?なにそれさっきと同じ話だね。
それなら君たち、いっそ彼女とつきあったらいかがかね?
 
あきれて何も言えないわ。
 
涅槃とか調子にのってごめんなさい。
いくら同じポーズをとっても、わたし、仏になんかなれないわ。
全然入滅してないわ。
  
お金をもらわなくても、結婚できなくても、妻に訴えられるかもしれなくても。
それでも不倫を続けているのは、結局自分で選んで決めているってことで。
やめるためのアドバイスが欲しいわけでなく、悲劇のヒロインとして
ヨシヨシしてほしかった彼女にはトンチンカンなアドバイスでしたのね。
 
ああ、めんど。
仏はこういうときなんて言うのかしらね。
坊主バーで聞いてみようかしら。
 
それではまた明日。